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サブスタンス

7回カンヌ国際映画祭コンペティション部門出品作『ザ・サブスタンス(原題) / The Substance』がお披露目された。

血みどろの残虐描写で話題を呼んだ『REVENGE リベンジ』のコラリー・ファルジャ監督作で、デミ・ムーアが美と若さに取りつかれた主人公役で衝撃的な怪演を見せている。

 デミが演じたのは、一世を風靡したスター、エリザベス・スパークル

エアロビ番組のホストとして長年人気を博していたが、年齢を理由に番組をクビになってしまう。

そんな時、細胞分裂を利用して“若く、より良いもう一人の自分”を生み出すことができる怪しげな注射薬「サブスタンス」を手に入れたエリザベスは早速使用し、自分の中から若く美しいスー(マーガレット・クアリー)を生み出す。

“エリザベスとスーは1週間ごとに入れ替わらないといけない”など「サブスタンス」の継続的な使用にはルールがあるが、若く美しくいることの中毒性はそれを狂わせ、彼女を破滅へと導いていくことになる。

あのデミ・ムーアの新作。

デミ・ムーアは御年61歳のベテランなのにホラーに体当たり演技での話題作とあっては観ない訳にはいかない。

実際、デミ・ムーアは61歳とは思えないスタイルと美貌で登場してまずはその若さに驚かさせる。

タイトルの「サブスタンス」は実体とか本質みたいな意味だが、この作品の中では依存性の高い薬物の名称となっている。

平たく言えば若返り薬で巻き起こされるホラー映画で大御所デミ・ムーアがやりそうにはない役柄ではある。

デミ・ムーアは劇中で全裸シーンを惜しみなく披露していてそのプロ意識には感服させられる。

デミ・ムーアが若返る話しなのでてっきり最新CGを駆使して若いCGデミ・ムーアになるのかと予想していたら全然違ってまるで異なる若い女が現れ、コレと現状のデミ・ムーアを行ったり来たりするというまるで攻殻機動隊草薙素子みたいなストーリーだ。

ただこの監督特有の演出と言うか表現方法が興味深く、これが作品を盛り上げているのは間違いない。

まあこの若い体を維持する薬物は最初から副作用のようなものがあるので後半、どう展開するのか薄々わかってくる。

ソレでも見入ってしまうのはやなりデミ・ムーアの際立つ怪演に頼る所が大きい。

ホラーと言えばホラーなのだがそこまで怖くないのでジャンル的にはスリラーじゃないかと思われる。

現在の自分と、若い女の身体の自分の間で整合性が取れなくなって精神的にどんどん病んでいくのはリアリティがある。

それが徐々に副作用となって若い身体に出てくると言う展開はまあ読めていたがソレでも最終的にどう着地させるのか楽しみになってきた(笑)

後半は確かにスリラーと言うよりホラーに近くなってきてますます目が離せなくなる。

CGと言うより特殊メイクを使ってトンデモ変化させていく姿はまさにホラーではある。

しかしデミ・ムーアもよくこんなヤバい役を引き受けたもんだと尊崇の念すら覚える。

段々この作品で伝えたい事がわかってくるのだが、その本質に気がつくとなんだか切なくなってしまう。

2時間20分の上映時間さ決して短くはないが展開が早くサクサク進むので、あっという間に思える。

特に終盤の畳み掛ける描き方はエンタメが何たるかよく心得てあって正直時間を忘れてしまった。

そして怒涛のラストへ向かうのだがこれまた予想の遥か上のエゲツないシーンに恐怖と言うより笑えてしまった(笑)

しかしこの超特殊メイクは完成させるのに凄まじい時間がかかるのは確実で制作陣の苦労が忍ばれる。

最後の方はエレファンマンみたいになってしまうのだがまあ何となく伝えたい事はわかるが、ルッキズムがどうのとか叫ばれる時代にマッチした作品かも知れない。

やなりこれはホラーではなく風刺の聴いたスリラーだろう。

ラストはドカーンと弾けて華々しく散ってさすがにやり過ぎに失笑してしまうがトータルではよく出来た作品だと思う。

デミ・ムーアの健闘が作品の出来に大いに反映しているのが嬉しかったザ・サブスタンスだった。