らをた広島

食べ歩きブログ

侍タイムスリッパー

現代にタイムスリップした武士の姿を描くSF時代劇。

落雷に打たれて現代の時代劇撮影所にタイムスリップした会津藩士が、剣の腕を生かして斬られ役で生計を立てる。

メガホンを取るのは『ごはん』などの安田淳一。

『一粒の麦 荻野吟子の生涯』などの山口馬木也、『AI崩壊』などの冨家ノリマサ、安田監督作『拳銃と目玉焼』などの沙倉ゆうののほか、峰蘭太郎、紅萬子、福田善晴らが出演する。

幕末の京都。剣豪として鳴らす会津藩士・高坂新左衛門(山口馬木也)は、ある長州藩士を襲撃するように命じられて刃を交えるが、その瞬間に落雷に打たれて気を失う。

目を覚ますと、新左衛門は現代の時代劇撮影所にいた。

混乱しながら行く先々で騒動を起こし、江戸幕府が140年前に滅んだことを知ってがくぜんとした新左衛門は死を覚悟するが、この時代で生きることを決意する。

自分には剣の腕しかないと、新左衛門は時代劇撮影所の門をたたき、斬られ役として身を立てていく。

マイナーな作品故、公開劇場数1から全国公開まで広がって行ったという伝説の作品。

この映画の監督さんがワイドナショーに出演していたので概略は知っていたが実際の作品を観るのは初めてだ。

とにかく制作費がないのでアレやこれや涙ぐましい努力を積み重ねて作られているのはワイドナショーで知ったが、パッと見る限りそんな低予算作品には見えない。

タイムスリップものと言えば太古の昔からある定番ジャンルでこれ迄履いて捨てるくらいそう言うのは観てきた。

それだけにそうそう簡単に目新しさを出せはしないだろう。

助監督さんが女優さんとして出演しているのは知っていたがなかなかどうして役者として遜色はない。

経費削減の為にヒマだから安く使える真夏の日中に撮影したらしいがかなり暑いさなかである事は何となくわかる(笑)

主演の役者さんは何処かで見たような気もするが他の俳優は当然ながら誰もわからない。

ストーリーはとにかく予想通りと言うか、江戸時代の侍が現代にタイムスリップするお話しで、ソレが時代劇の撮影の場に偶然登場するのがミソだろう。

音声の状態にシーンによってムラがあるようで一部セリフが反響して聞き取りにくい場面があるがご愛嬌だろう。

昔、戦国自衛隊というタイムスリップものがあったが、ソレと比較するとどちらかと言えばコメディ感が強い所が珍しい。

確かに本物の侍が時代劇撮影に参加するという発想自体は面白いしコレを膨らませようというこの企画。

今や完全に斜陽の時代劇という現代なのだが、この作品の中でもその問題のある世界観はしっかり踏襲している。

細かい所でアレコレツッコミ所も有りはするがコメディだからまあこんなもんだろう。

ホンモノの侍が現代に登場して本位ではないにしろ徐々に現代の時代劇に順応していく過程を描いているがただ笑えるだけではなく、人生の示唆もあってなかなか奥が深い。

それより何より衰退してしまった時代劇をどうにかしたいという気持ちはよくわかるが時代劇がこうなったのは要は飽きられたからだ。

肝心のチャンバラが昔ながらの服も切れていないのにやられるとか、血が全く出ないとかリアリティがなければ受け入れられないだろう。

気が付けばこの作品にすっかり取り込まれてしまって没入してしまったくらいに面白いのは間違いない。

この作品を観ているとやはり映画というのは脚本の力が半分以上あるように感じていたがこれに自信を持ってしまった。

終盤にかけて先が全く読めずとにかく斬新で盛り上がっていくのはとにかくこの脚本が良いからだろう。

役者の頑張りもスゴく、低予算作品には全く見えない凄みみたいなもんに溢れている。

最近になってSHOGUNが世界でヒットしアメリカで大きな賞まで取って時代劇が評価し直されているが、この作品もその上昇気流に乗って評価されると嬉しい。

こういう日本映画が作られるなんて邦画、とりわけ時代劇の未来も明るいんじゃないかと思わせてくれた侍タイムスリッパーだった。