上映時間:94分 / 製作:1956年(日本) / 配給:大映=大映京都
国会に売春禁止法案が上程されていた頃、赤線地帯と呼ばれる区域にあった特殊飲食店“夢の里“の主人は、法案が通過すれば売春婦は投獄されると言って女たちを驚かせる。
一人息子のために働く女、入獄中の父の保釈金のために働く女、夫が失業しているので通い娼婦をする女、元黒人兵オンリーだった女たち。
そんな吹きだまりの“夢の里“にある日、下働きの少女がやってくる。
時が経ち法案が4度目の却下となった頃、少女はおそるおそる道往く客に声をかけるのだった。
「浪華悲歌」や「祗園の姉妹」を手掛けた溝口健二が得意とする娼婦たちの世界。
法案は映画の封切後同年5月に成立。
その3ヵ月後の8月24日、溝口は骨髄白血症のため58歳の生涯を閉じた。
1956年公開だから67年も前の作品。
当然ながらモノクロだがリマスターされていて映像は思いの外キレイだ。
さすがに出演者で生きておられる方はほとんどおられんだろう。
赤線地帯という挑戦的なタイトルだが売春婦をテーマにしてはいるがいわゆるポルノ映画ではないのでハダカやエロシーン全く出ない。
若い頃の京マチ子と若尾文子は驚くほどにキレイで間違いなくこの作品のハイライトでこれを拝むだけでも観る価値がある。
昭和30年代の町並みもセットかロケかわからないが表現されていてさすがに自分も知らない世界だ。
それにBGMが独特でオバケ作品と言うかウルトラQというか不思議な雰囲気を醸し出している。
ちょっと前にスーパードラマTVで日本ではミステリーゾーンとして放送されていたアメリカのトワイライトゾーンのファーストシーズンを連日やっていたので録画して観たが今となってはショボ過ぎる内容に途中離脱してしまったが、同時期のこの作品はSFではなくテーマが人間模様だからなのか古さを感じさせない。
売春宿で暮らす女性達の悲喜こもごもを描いている作品だけどこの描き方が絶妙で古い映画だと言うのを忘れてしまう。
1時間25分の短い映画だがそれこそあっという間に見終わってしまうくらいに、作品の世界に強引に引っ張りこまれる。
特にラストは色々考えさせられるが当時の日本ではこういう事はおそらくは日常茶飯事だったのだろう。
女優さんの実力が試されるような作品ではあるが独特なテーマを考えさせられて面白かった赤線地帯だった。