らをた広島

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オッペンハイマー

「原爆の父」と呼ばれたアメリカの物理学者、J・ロバート・オッペンハイマーを描く人間ドラマ。

ピュリッツァー賞を受賞したカイ・バード、マーティン・J・シャーウィンによる伝記を原作に、人類に原子爆弾という存在をもたらした男の人生を描く。

監督などを手掛けるのは『TENET テネット』などのクリストファー・ノーラン

麦の穂をゆらす風』などのキリアン・マーフィのほか、エミリー・ブラントマット・デイモンロバート・ダウニー・Jrらが出演する。

第二次世界大戦下、アメリカで立ち上げられた極秘プロジェクト「マンハッタン計画」。

これに参加した J・ロバート・オッペンハイマーは優秀な科学者たちを率いて世界で初となる原子爆弾の開発に成功する。

しかし原爆が実戦で投下されると、その惨状を聞いたオッペンハイマーは深く苦悩するようになる。

冷戦、赤狩り―激動の時代の波に、オッペンハイマーはのまれてゆくのだった―。

原爆の父と言うことで敬遠しようかとも思ったが他ならぬクリストファー・ノーラン監督作品と言うことで観た。

上映時間はなんと3時間という超大作だ。

相変わらずクリストファー・ノーラン監督の表現は独特でオリジナリティがスゴイ。

尚且つ大概内容は面白いが難解で訳がわからんようになる事が多いが今回は実話ベースの作品なのでどんなふうに仕上げるのか興味があった。

主人公のオッペンハイマーユダヤ人でストーリーにもこのセリフが出てくるがココらへんが原爆という強力な兵器を完成させる原動力なのだろう。

オッペンハイマーについてある程度知識がないとさすがについていくのに必死状態になるがソレでもどうにか喰らいついた。

女たらしの共産主義者だったのは全く知らなかったしそう言う思想の博士を抜擢した軍部の決断には驚いた。

それにしても、全く何もない荒野にわざわざ街を作り、研究所を作って家族ごと雇い入れて研究させるなんて荒業はアメリカじゃないと出来なかっただろう。

世界中が核兵器の開発に血眼になる戦時中が描かれるが日本とは全く違う世界で、少なくともアメリカに居たら戦争してるなんて認識は日本とは比較にならんくらいに低かっただろう。

もっと科学的にオッペンハイマー博士がどういう風に核爆弾を「発明」したのかが描かれるのかと思っていたが、予想と全然違ってもっと政治的、思想的な内容になっていてなかなか難しい。

ナチス相手に使う筈だった核爆弾だがドイツが敗戦し使用目的が浮いてしまった。

どんな綺麗事を並べても敗戦濃厚な日本相手に二発の原爆を投下したのはこの核開発の「成果」が知りたかったからなのは事実なので、ここの表現は日本人として観ていて微妙だ。

投下候補地から京都を除外するシーンなんてまさに日本への核攻撃は「実験」だったからだろう。

さすがに広島、長崎に原爆が投下されたシーンはなかったが原爆が「成功」したとの知らせが入って夥しい数の日本人が殺戮されたと関係者が喜ぶ所は見ていられなかった。

原爆を実用化したからと言ってオッペンハイマー博士が悪いとは思わないが広島の日本人としてはやはり考えさせられる。

戦後のオッペンハイマーは原爆の現実を知り一転、軍縮を唱えて戦争の英雄からソビエト工作員の汚名を着せられる。

しかし映画の最後になるまでマット・デイモンロバート・ダウニー・Jrにはあまりにイメージが違うので全然気づかなかったが、その徹底した役作りと演技力には恐れ入る。

3時間の果てに、この映画でもあの原爆投下が戦争を終わらせたとアメリカはまだ今でも結論付けているのかとガッカリした。

モノクロを効果的に使う手法は流石だしコレだけ長い映画なのに飽きさせず最後まで観させる実力は確かに素晴らしいがやはり今回も自分にはかなり難解でわかりにくかったオッペンハイマーだった。