上映時間:112分 / 製作:1982年(日本) / 配給:角川春樹事務所
それまでプロデューサーだった角川春樹の監督第1回作品。
原作はかなりの長編で内容的にもアクの強いものだったが、これをジゴロものに仕立て、全編を実にファッショナブルな感覚で映像化した。
また日本映画始まって以来の本格的オートバイ・レース映画でもある。
監督:角川春樹
キャスト
北野晶夫:草刈正雄
クリスティーン・アダムス:レベッカ・ホールデン
大木圭史:勝野洋
緒方宗行:奥田瑛二
緒方あずさ:浅野温子
斎藤京子:木の実ナナ
テディ片岡:伊武雅刀
自分自身がバイクに乗りどっぷりとハマっていた学生時代に公開された映画で実際に映画館に行ったのを覚えている。
特にオープニングのTZ500に主演の草刈正雄がヒラリと跨るシーンはあまりのカッコよさに下手くそなのに真似て、足が引っかかってコケた事もある(笑)
草刈正雄の走行シーンはチャンピオンになる前の平忠彦が演じていたのは当時から有名なエピソードだ。
この作品はヤマハ発動機が完全バックアップされていて登場するマシンはヤマハ製、サーキットはヤマハと縁が深い仙台の菅生サーキット(スポーツランドSUGO)だ。
今となっては幻になってしまった2サイクルマシン独特のかん高いエギゾーストノートは懐かしくもありオッサンには感動ものだ。
直4エンジン左右非対称チャンバー4本出しTZ500に当時新型だったV4エンジンのYZR500がメインで使用され他にもカワサキKR500やスズキRGBなど、当時を知る者にとっては涙なくしては観ていられない(笑)
TZ500をエンジン型式の全く違うYZR500にプライベーターがガレージで改造してしまうのはさすがに当時でも半笑いしてしまったがそこら辺は固いこといいっこなしと行ったところか。
今や老獪な役者というイメージのある草刈正雄だがこの頃は若くギラギラしていて長身に端正な顔立ちなど今見てもこの役にピッタリだ。
二輪のレーシングマシンも然ることながら出てくるクルマもかなり凝っていてアルピナやブッフマンポルシェなど普段見る事ができない高級車ばかりだ。
ヒロインはレベッカ・ホールデンと言うアメリカの女優さんだが、この当時も「誰や、このヘッタクソな女は?」と思ったが実際その後ハリウッドであまり活躍できなかったようだ。
映画の印象は目一杯背伸びしてスタイリッシュな映像は当時本当に驚いたのを覚えているが今見ても古さを感じさせないが、ツッコミ所は満載でスカし過ぎで恥ずかしく観ているコッチがサブイボできてしまう(笑)
反面、ストーリーはトップカテゴリーの場でプライベーターがワークスに勝つなんて荒唐無稽もイイとこで何のヒネリもなく単調で薄っぺらい。
原作はかなりの長辺小説らしいのでそれを1本の映画にしようと思うとやむを得ないのだろう。
トレンディドラマでまだブレイク前の奥田瑛二や浅野温子が出ていて二人ともまだまだ若くて初々しい。
スポーツランドSUGOは実際行った事があるが想像していたよりかなり本格的なサーキットで山と谷を繋いだようなアップダウンの激しいダイナミックコースだったが、もしもこの映画を見ていなかったら訪れなかっただろう(笑)
この作品のキモとも言えるレースシーンは時代からしてCGやGoProなどは使えないので実際に走って撮影会してるので映像の迫力はかなりある。
今では絶滅してしまった押しがけスタートも如何にも二輪のレースという趣があって悪くない。
レースを知ってる人間からしめ見れば「ンなことあるかい!」的な無理くり展開ではあるが、こうでもしないとバイクレースなんて題材で映画は作れないのかも知れない。
一旦コケて最後尾から追い上げて優勝してしまうという展開はまだ、許せるが今も昔もあり得ない二輪のスプリントレースでの途中給油には空いた口が塞がらなかった(笑)
まあソレでもこの作品はヒットして当時のバイクブームを加速させたのは紛れもない事実ではある。
そういう意味では日本のバイクレース映画の金字塔とも言える汚れた英雄だった。